4-1-6実施時期や費用の目安は?アパート・マンションの大規模修繕をズバリ解説
実施時期や費用の目安は?アパート・マンションの大規模修繕をズバリ解説
「そろそろ大規模修繕も考えないと……わかっちゃいるけど、資金もとぼしいし、まだまだ大丈夫? いつまでにやったほうがいい?」どのくらいのサイクルで実施するべきか、コストの目安はいくらかをズバリ解説します。
大規模修繕の周期の目安|設備によって周期が異なる
一般的な修繕サイクルとは?
最初に一般的な修繕サイクルを紹介しましょう。もともと大規模修繕は、分譲マンションから普及し始めました。分譲マンションの場合は、事業主(売主)のデベロッパーが、部位ごとの工事項目と修繕周期、費用などを盛り込んだ30年程度の「長期修繕計画」を立て、管理組合がその計画に基づいて大規模修繕工事を実施していく段取りができあがっています。
分譲マンションは、冒頭の図のように、おおむね12年程度ごとに行う計画がスタンダード化しています。賃貸住宅の場合は、木造、鉄骨造、プレハブ造、RC(鉄筋コンクリート)造など、建物の構造・工法が多様です。それによって修繕サイクルも異なりますが、一つの目安としては、5年、10年単位で繰り返されるものと考えていいでしょう。RC造の高層マンションの場合は、給水ポンプや貯水層、エレベータなどの特別な共用設備があり、30年単位で更新時期を迎えるといわれます。
長期修繕の周期の目安
大規模修繕の費用の目安
次に、大規模修繕にかかるコストについて紹介しましょう。ここではシングル向け木造アパートと小ファミリータイプのマンションを例に、30年間の費用を示しました。
足場をかけて屋根や外壁を塗り替える本格的な大規模修繕は、30年間で2回は必要です。アパートでは1棟で約250万円。マンションは1回目が550万円超、2回目は屋上防水工事で金額が膨らむため倍の約1,100万円。30年間のトータルでは、アパートが1棟で800万円超、マンションが同2,500万円超という試算です。
ここまでは国や業界団体のガイドラインに示された試算です。現実には、このような理想的な周期で実施しているオーナーは少ないでしょう。だいたい最初の10年は、建物を新築したハウスメーカーや建設会社が建築基準法に基づく10年保証を付けます(構造部分や外壁・屋根など雨水が侵入する恐れのある部分)。定期点検やアフターケアの範囲でお任せというケースが多いかもしれません。
劣化診断の必要性
問題は10年保証が過ぎて、最初の大規模修繕のタイミングを迎えたとき。築10年を超えると外観も汚れて競争力が落ち、空室が増え始める頃です。「家賃値下げかリフォームか」で悩みながら、なるべく出費を抑えたいとズルズル先延ばしにしてしまう。その結果、15~20年経つまで何もしないケースも珍しくないでしょう。遅れれば遅れるほど、多くの工事項目が重なり、金額も膨らんでしまいます。
保有物件が、本来やるべき修繕サイクルのどのポジションにいるのかを知るには、まず検査会社に劣化診断を依頼し、建物の客観的な症状を把握します。その状況を踏まえて、今後、いつ何の工事が必要か、優先順位を付けた大まかな修繕スケジュールを作るところから始めましょう。10~20室以下の小規模な賃貸マンションやアパートなら、劣化診断の費用は6~10万円で済みます。